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2017年11月16日木曜日

炭水化物の摂り過ぎは死亡リスクを上げるのか

最近また何やら不思議な説が流行しているようだ。曰く、炭水化物を摂りすぎると死亡リスクが上がり、脂肪を摂れば摂るほど死亡リスクが下がるとのこと。

ランセットという高名な医学雑誌に8月に掲載された論文が出所らしい。「低炭水化物ダイエット」を推奨する方々のブログ等で紹介されている内容を簡潔にまとめると、

1)脂肪を摂りすぎると死亡リスクが上がるという従来の説は、栄養過多の欧米での統計なのでそれ以外の国々でもあてはまるかわからなかった。

2)そこで研究チームは高・中・低所得の3グループの国々の十数万人を対象に、食事中の炭水化物・脂肪・タンパク質のエネルギー割合と、脳卒中や心臓疾患など血管性の病気での死亡率との関係を調べた。

3)炭水化物の割合が70%より大きい群は最も小さい群に比べて総死亡率が28%高かった。

4)脂肪の割合が15%、30%と大きくなるほど死亡率は低くなった。

この研究報告を根拠にして「炭水化物の摂り過ぎはダメ」とおっしゃるのだが、何だかおかしい。

まずこの研究報告では「割合」と言っているのであって「」ではない。だから炭水化物の摂り過ぎではなく、脂肪やタンパク質の不足が原因ではないのか? なぜか「炭水化物の摂取量が多いほど~」と皆さんお書きになっているが。

そこで炭水化物70%超がどういう国なのかが知りたいのだがほとんどのサイトには書いていない。1つだけ書いているサイトがあったが・・・

中国・南アジア・アフリカの国、らしい。具体的には中所得の中国・南アフリカ、低所得のインド・パキスタン・バングラデシュ・ジンバブエがあてはまる。やっぱりだ。

さらに、炭水化物70%超群では「総死亡率」が28%高く「循環器疾患以外による死亡のリスク」も38%高いという。ならば循環器疾患の死亡リスクの高さは28%以下であることになる。

循環器疾患以外というのは食事よりもその国の医療・衛生状態に影響を受けるだろう。それが38%高いのに循環器疾患はそれほどまでは高くないのだから、むしろその国の水準から言えば死亡率は低く抑えられているとも考えられる。

結局この研究で問題なのは、環境が大きく異なる国の垣根を越えて食事という要素だけを取り出して比較しているということにある。本当に意味のある結果を出すためには食事以外の条件を同じにしなければならない。

研究チームの名誉のために言うならば、彼らの結論は「低所得国は炭水化物の割合が多いからもっと脂肪からエネルギーをとるべきだ」という至極まっとうなものらしい。

我田引水している方々のことは言うまい。

最後に、脂肪割合が高い=死亡リスクが低かったのは北米・欧州・中東・東南アジアといういかにもお金持ちの国々だということも付け加えておこう。

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